受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

つだ ひろあき

津田 廣明

(72歳:宮城県石巻市)
津田 廣明

大震災発生時、石巻市の石巻みづほ第二幼稚園にて、大地震、大津波から園に残っていた園児、職員など23名を、卓越した判断力と指導力で守った。震災後「津波9メートル」の情報を得て送迎バスで避難することも考えたが、交通状況から無理と判断した。津波が迫ってくるのが見え、2階のゆうぎ室にいた園児を窓から棟続きのボイラー室の屋根に移動させ、3.5m上の屋上に梯子をかけて園児を登らせ、先に上った職員に引っ張り上げ、全員を屋根の上に避難させ一夜を過ごした。水はボイラー室の屋根まで迫っていた。(園には約140人の園児が通っており、園に残っていた11名は間一髪で難を逃れたが、既に帰宅していた7人が津波に巻き込まれて亡くなった)

推薦者:社団法人宮城県私立幼稚園連合会
理事長 村山 十五
宮城県知事 村井 嘉浩

この度、思いもかけず東日本大震災における貢献者として表彰の栄に与ることになり、大変な驚きと恐縮で一杯でございます。受賞は私個人と言うよりも職員一同が賜ったものと考え、有り難く頂戴させて頂きます。

救助された時の様子

3月11日に石巻みづほ第二幼稚園にて、私他職員10名と、預り保育の園児13名が大地震に遭遇いたしました。地震後津波を予想し判断を迫られる中、渋滞が始まり、車での避難は難しく、また徒歩で避難出来る安全な場所も周囲にないという状況では、この場が一番安全ではないかと判断し、園に留まる決断を致しました。地震直後、保護者に迎えられ2名の児童が帰宅し、迎えに来て帰宅不能となった父親をあわせ、23名が行動を共にする事となりました。

程なく防災無線から「鮎川」「津波」「9m」と言う音声が聞こえてきました。半信半疑ではありましたが、9mの高さであれば二階の屋根に登れば安全だと考え、念のため脚立を準備させておきました。その後間もなく大津波が襲来しました。急いで一階の屋根から二階の屋根へと登りました。幸い全員無事に登る事はできましたが、屋根の上は雪と風で、寒さは身体の芯まで冷える状況でした。

翌日11時頃、三重の海上保安庁の方々に救助され、続いて自衛艦「たかなみ」に収容されました。関係の方々には、救助までの献身的な働きとご親切を頂き只々感謝するばかりです。二日後に親元に子供達を帰すことが出来た事を、職員が家族に元気で会えた事は歓びに堪えませんでした。

震災発生時、ほとんどの園児が帰宅していた事、保育中に地震、津波がこなかった事が不幸中の幸いでした。しかし後で知った事ですが、7名の園児が自宅で逃げる途中に亡くなっており、悲しくてやりきれない気持ちは今も絶えません。

当時の預かり保育の子の内、現在2名が在籍していますが、地震等には大変敏感になり精神的に不安定でしたが、時間の経過と共に気持ちの立て直しも出来、一安心しています。

石巻みづほ第二幼稚園は全壊し、物品も全て汚損流失してしまい、現在は石巻みづほ幼稚園と合同で保育している状態です。市の復興計画が明確になった段階で正式に再建する予定です。今後種々難しい問題が予想されますが、皆様方のお智恵を拝借しながら頑張ってまいりたいと考えております。今後とも宜しくお願い申し上げ、受賞に対する御礼といたします。