受賞者紹介

平成13年度 社会貢献者表彰

第一部門/緊急時の功績

あさい おといち

故.浅井 乙一

(昭 2. 2.25生) 新潟県北魚沼郡入広瀬村
故.浅井 乙一
平成12年6月18日午前8時25分頃、新潟県北魚沼郡浅草岳において民間人として山岳捜査活動を行っている最中に雪崩が発生した。事故の危険を顧みず他の捜査隊員に対して雪崩の発生を告げて待避させようとしたが、自分自身も雪崩に直撃され亡くなられた。
推薦者:(財)警察協会

平成12年6月17日、浅草岳に山菜を採りに行くといったまま帰宅しない男性を捜索するため、警察官、消防署員を中心として4班編制の総員27名による捜索隊が編成された。

浅井乙一さんは地元で旅館業を営んでいた民間人だが、遭難現場の山岳を周知している山男であり、地元の山岳遭難者救助団体からの要請を受けて捜索隊に加わった。翌18日の午前6時頃から、浅草岳一帯の捜索が開始され、浅井さんは第1班(7名)の班長として北側の斜面の捜索に当たっていた。8時頃、他の捜索班から行方不明となっていた男性を発見したとの連絡を受けて現地へ急行したが、男性は既に死亡していた。現場は急斜面であり、人力では遺体の収容が極めて困難なことから、捜索隊は新潟県警のヘリコプターの出動を要請した。

他の山岳遭難者捜索活動で浅草岳近くを飛行していた県警のヘリコプターが間もなく現場上空に到着、ホバリング(空中停止)して、捜索隊員らによる遺体収容作業が開始されたが、現場は北側雪渓上の急斜面であり、山の上方において雪崩が発生する恐れがあったことから、浅井さんと他の捜索隊班長との2名で、収容現場の上方において見張り役に当たった。

収容作業中の午前8時25分頃、突如雪崩が発生し、これを察知した浅井さんは、隊員に対して「危ない、逃げろ逃げろ」と大きな怒鳴り声を上げながら危険を告げようと隊員たちの方へ走りだしたが、瞬時に襲ってきた雪崩の雪塊に直撃され、その場において絶命した。

浅井さんの他、雪崩に巻き込まれた消防隊員1名、警察官2名が殉職するという悲惨な事故となったが、民間人でありながら身の危険を顧みず、雪崩の発生を他の捜索隊員に告げて待避させようとした浅井さんの行動は、勇敢であるとともに全くの無私の行いだった。