一般社団法人 野のゆり

代表の須藤九二子さんは自身が養女で、養父母に育てられたことを引け目に思っていたが、結婚後に実子を育てるようになると、養父母の深い愛情に気づき、血縁は関係ないと思えるようになった。「子どもの養育には家庭的な環境が大事」と、市役所の養育里親募集のパンフレットを見ていつか里親をやってみたいと思うようになり、2002年に里親登録、2009年に専門里親になった。2013年にファミリーホームに移行、山形県では3件目、庄内地域では唯一のファミリーホームとなる。「あなたもこの世に望まれてきた大切な人です」というマザーテレサの言葉を指針に、これまでに14名を送り出し、現在も過酷な家庭環境に育った子どもたち5名を養育中、自立後も温かい実家として子どもたちを見守る。最初に里子として育てたのは、小学2年生の男の子。グレーゾーンの発達障がいのあるその子を10年養育し、同様の障がいのある児童の自立の難しさを経験したことから、2021年に障がい者グループホーム「Forゆう」を、2022年に「Youどえる」を開所。就労支援事業所と一体型の グループホームが多い中、「Forゆう」と「Youどえる」は、日中活動も自由で、自分に合った仕事や作業を選択できることで、積極的に社会参加ができるのが特徴。計8名が入所している。
有限会社 スエヒロ 代表取締役 平形 洋司
この度は社会貢献者表彰と、他の多くの活動を知る機会を頂き有難うございます。
当法人は自立した里子がホームレスになったのがきっかけで2019年に設立しました。養育里親になって22年、これまで19名の子どもたちと共に生活をしてきましたが、初めての里子がこの田舎でホームレスになるとは思いもしませんでした。各市町村に設置されたばかりの生活困窮相談センターに相談するも、しまいには生活保護しかありませんと言われ、社会参加もしないで暮らさせるわけにもいかず、宮城県のNPO法人まきばフリースクールに助けてもらい預かってもらうことにしました。武田氏から「その間に彼の居場所を見つけてください」と言われたのが今の事業に繋がっています。
私に何かできないかという思いだけで、行政の窓口を訪ね、社会的養護の子どもたちの支援につながるものがないか探し求めました。緊急のシェルター、自立援助ホーム、障がい者グループホームなどです。その頃、障がいのある里子は一般就労が決まってもグループホームに入居できずにいました。経営面からグループホームと就労支援事業が一体型になっているため自由に就労場所を選べない、一般就労出来る軽度障がい者は支援費が極端に低いため受入れが難しい現状もありました。里子のホームレスから5年が経ちましたが、自費で中古住宅を購入、法人の設立を目指し、シェルター的ステップハウス「Forゆう」を開設しました。
問い合わせで「食事は?」「24時間の見守りは?」と聞かれて、個人で運営する難しさを感じている所に「須藤さんのニーズには障がい者グループホームがいいと思います。やりませんか?」と言われ、念願の障がい者グループホームを開設できました。自由に就労場所が選択できる、軽度障がい者の受入れを目指し、2021年にステップハウスForゆうを障がい者グループホームに移行、翌年2か所目のグループホームを増設する事ができました。2025年4月に3か所目のグループホームを開設予定です。ここに家電等を備えた住居を併設し、シェルターとして利用できるようにしています。ホームレスになった里子は宮城県で支援を継続してもらい、生活保護からも脱却でき、今は自立して暮らしています。弱さのある人も支援があれば社会の中で、自分の居場所を得ることができます。今後もそのような支援の出来る法人でありたいと受賞を期に強く思いました。