受賞者紹介

第61回 社会貢献者表彰
しょうやま よしこ

庄山 好子

(熊本県)
庄山 好子

旧満州、現在の中国・黒龍江省の出身の庄山好子さんは、1987年に中国残留子女2世の夫とその家族とともに、26歳の時に来日。日本といえば、富士山と桜しか知らなかった庄山さんに、地域の人々が、温かく身振り手ぶりで日本語を教えてくれたことに感動し、日本が大好きになった。子どもが生まれると、外国にルーツのある児童と家庭に対する周囲の理解不足と、学校の先生、地域の人々との間に言葉や文化の壁があると感じ、その解決に向けて学校や教育委員会に働きかけた。その甲斐あって、1999年から熊本県菊陽町では、いち早く中国にルーツのある児童を支援する活動がスタート。以来、庄山さんは、菊陽町の日本語指導員として、日本語指導をはじめ、家庭訪問時の通訳、学習、進路、生活面での相談への対応、多文化共生の講師、運動会での中国語放送、在留カードの更新手続きの翻訳等を行う。また病院受診の同行、生活支援、学校の提出物の手伝いなど、指導員の範疇を超えて献身的にサポート。町内8つの小・中学校に関わり、これまでに100名以上の児童生徒を支援した。また、日本の児童に中国文化や中国語に親しんでもらう「パンダの会」も定期的に開催するなど、菊陽町の多文化共生の道へ大きく貢献。50歳の時、日本でお世話になった方々へ恩送りしたいと日本に帰化した。

この度は、社会貢献者表彰受賞の栄に浴し、感激と喜びに堪えません。改めて私や菊陽町の取組に光をあてていただきました安倍昭恵会長様をはじめ、関係の皆様に心より感謝申し上げます。

私は、中国人の両親のもとに生まれ、日本に住む親戚を訪ねる短期間の来日と聞かされて日本に来て以来、三十七年の月日が流れようとしています。来日当初は孤独で、頼る人や日本語を教わる人もいませんでした。そのような中、義父から「これからは家族全員で日本に永住する」と告げられたときは、それはそれは悲しくて中国へ帰りたいとばかり考えていました。私の中国名は滕淑香ですが、永住することが決まってからは庄山好子と名乗ることになりました。初めの頃は新しい名前に慣れなくて、自分が自分でなくなったような絶望にも似た感覚を覚えたことを思い出します。

そんな私に転機が訪れたのが、菊陽町のみなさんとの出会いです。当時、菊陽町役場の担当者が私を訪ねてこられ、菊陽町に住む中国人に対する通訳や相談業務を依頼されました。私は誰かのお役に立てることがうれしくて、すぐなかまとともに活動を始め、人生の新たな一歩を踏み出しました。私が出会った中国をはじめ外国にルーツを持つ人々は皆、なんとか日本社会に溶け込み、家族で支え合い、日本社会に貢献しようと懸命に努力する人ばかりでした。その人々との出会いがさらに私に勇気と活力を与えてくださり、今まで活動を続けてくることができました。これらの出会いがなかったら、今の私も今回の受賞もなかったと思います。小学生の頃に出会った子どもたちが中学生・高校生と成長し、さらに大学や専門学校等で学び、今や立派な社会人となって日本社会でグローバルに活躍するほどに成長しました。この子らの成長やご家族の暮らしに寄り添わせていただいたことは、私にとってこの上ない悦びであり、私の人生そのものと言っても過言ではありません。お陰さまで私が多くのみなさんと出会い、つながりながら生活できるようになったように、私の家族にも多くの友人ができ、幸せに暮らしております。

今回の受賞に際し菊陽町やこれまで出会った皆様に改めて感謝申し上げますとともに、中国と日本との心の架け橋となれるよう引き続きご恩返しの取り組みをなかまとともに続けて参ります。

また、菊陽町では、台湾企業などの進出により外国の人たちとその子どもたちの人口が増えています。台湾をはじめとする多くの国々の子どもたちやその家族と共に歩み、多様性を深めることで誰もが暮らしやすい社会づくりに微力ながら支援することで私や家族を支えてくださったすべての皆様にご恩送りをしていく決意を新たにしました。

  • 27年前活動を始めたころ中国に親しみを持ってももらうため菊陽町の小学校で行った文化紹介
    27年前活動を始めたころ中国に親しみを持ってももらうため菊陽町の小学校で行った文化紹介
  • 5年前から卒業式から三か国語での式辞を開始しました。
    5年前から卒業式から三か国語での式辞を開始しました。
  • 外国にルーツのある児童・生徒とその保護者が地域に溶け込むための交流会
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  • 生徒の志望校合格のため、受験用のテキストを購入し入試対策の指導を行います
    生徒の志望校合格のため、受験用のテキストを購入し入試対策の指導を行います
  • 学校からのお知らせを翻訳中
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  • 学習指導の際子どもの目線に合わせる庄山先生は子どもたちに慕われています
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  • 児童の頃から国際理解を深めるために開催する「パンダの会」
    児童の頃から国際理解を深めるために開催する「パンダの会」
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