点字楽譜利用連絡会
(ヴァイオリニスト)
日本においては、点字の楽譜は個人の依頼でボランティアのグループなどが制作している。楽譜の点訳は点字の知識に加え楽譜の知識、楽器ごとに表記に工夫が求められ、非常に手間のかかるもの。それを個人の所有物で終わらせるのではなく、共通の財産として残し、後に必要としている人が利用できるシステムを作ることを最大の目的に、ヴァイオリニスト和波たかよしさんを代表として2005年に会として発足した。主な19の楽譜点訳ボランティアグループや点字図書館などの11施設、ユーザーの個人が入会している。
会の運営委員や会員の間にはメーリングリストを設け、常に点字楽譜への希望や情報の交換を行っている。各グループから点訳楽譜の目録の提供を受け、それをわかりやすく分類してホームページで公開。内容は随時更新され、現在約7,600曲がリストアップされている。年に2回の「集い」は東京と東京以外の都市で開催し、点字楽譜ユーザーなどを招いて話を聴くとともに、幅広く意見交換を行う。2017年には美智子上皇后も出席された。
また点訳者のスキルアップのための研究会を定期的に開催し、多くの参加者を得て活発な議論が行われている。
帝国ホテルでの「社会貢献者表彰式」で、様々な分野で人のため、社会のために貢献しておられる素晴らしい方々と同席させていただく機会に恵まれ、「点字楽譜利用連絡会」にも表彰の栄誉を与えていただいたことに、深い感謝の念を覚えました。ここに、改めて心より御礼申し上げます。
私事ですが、20年前に、亡母が代表を務めていた視覚障害者の外出介助ボランティア組織「アカンパニー・グループ」が同じ賞をいただいており、はからずも親子揃って団体の代表として式典に出席できたことに、深い喜びを感じていました。
さて、2005年に皇后陛下(現在の上皇后様)から「点字楽譜のために役立てて」とのお言葉とともに御下賜金を頂戴したことが、「点字楽譜利用連絡会」発足のきっかけでした。視覚障害者が音楽を学ぶ上で、またプロやアマチュアの音楽家として活動するためには、点字楽譜による曲の習得が不可欠ですが、我が国ではもっぱらボランティアが活字の楽譜を点訳する仕事を担っており、全国に点在するグループや個人が、ユーザーの希望に応じて楽譜点訳を行っています。それらの楽譜を整理し、リストアップして、個人向けに製作されたものでも共有財産として、他のユーザーも利用可能にするシステム作りを目指すことが、陛下のお心にお応えする最良の道と考えました。点訳楽譜の目録収集と分類に多くの時間を費やした末、ようやくホームページを設置して、国内で作られた点字楽譜のリストを掲載するところまでこぎつけました。
さらに、点訳ボランティア同士、またユーザーとボランティア間の交流をはかるための「つどい」の開催、点訳者のスキルアップを目指す研究会の開催なども行っており、いずれは点字楽譜を学びたい視覚障害者に、もっと容易にその機会を提供できる方法も模索していきたいと考えています。
音楽は視覚障害者にとって昔から大切な職域の一つですが、点字楽譜の入手が困難だったり、その習得の機会が得られにくいために断念する人も少なくないのが現状です。この状態を少しでも改善するとともに、19世紀にフランスのルイ・ブライユが考案し、世界中で共通のものとして用いられているブライユの点字楽譜を守り、さらなる普及を目指すことが、私たちの大切な使命と考えています。
今回の表彰を大きな励みとし、これからも細く長く、目的に向かって努力する会であり続けるために、一同力を合わせて努力しようと、決意を新たにしています。
代表 和波 たかよし(ヴァイオリニスト)