公益財団法人 社会貢献支援財団
受賞者代表・とっとり・民話を語る会 会長 小林 龍雄 さん
とっとり・民話を語る会の会長、小林龍雄でございます。 本日は晴れやかな会場で、社会貢献者表彰をいただき、心より御礼を申し上げます。
私たちは、民話という古来よりの伝承文化を、次の時代へ継承していくべく、活動を二十数年続けてまいりました。 民話は、「常民の生活」という文化を、「自然との関わり方」「人間との関わり方」「教え」を、分りやすく面白く興味を引く形で物語にしたものです。 今まで、ジャンルとしては、表彰と縁遠い地味な活動でした。
この度の、社会貢献者表彰は、活動への大きな励みになると同時に、全国の民話を愛する仲間にとりましても、大変な力を得たことになります。 しっかりと、次の世代へ継承すべく、切磋琢磨してまいりますので、宜しくお願いを申し上げます。
本日は、誠にありがとうございました。
なお、貴重な時間ではありますが、せっかくの機会でございますので、「昔話」を一つ用意してまいりました。聞いていただきたいと思います。
題名は「キジとカラス」で、鳥取市の無形文化財に指定されている「佐治谷話」(さじだにばなし)七十八話の内の一つでございます。
町の人が、田舎者をだまそうとしますが、はてどうなりますやら!
語り部は、とっとり・民話を語る会会員枡田美穂子さんです。
昔々の、或る年のこと。
寒さも、追々ときなりだした、或る日の昼下がりに、用瀬(もちがせ)の町中で往来を、佐治の男が、何やら大けな篭を大事そうに背負って。
右の方には、ザル棒の先に、きれいな見事な大けな雉子を一羽ぶら下げて、得意そうに売り歩いておったそうな。
「カラスはいらんか、カラスはいらんか、大けなカラス、安ぅするが、いらんか」って大声で、竿の先の雉子を、ぶらりん、ぶらりん、させもって、歩いておっただって。
「おい、まあ、ありゃう見いや、在郷(さいご)の者(もん)が、阿保だけぇ、大きな雉子う持っとって、カラスだカラスだって間違えて売って廻りょうるわいや。安ぅさしてみんな買あて一儲けしたらぁかいや」
日頃、狡猾(こうかつ)なことで通っている町の者(もん)が、しめし合わせて、カラス売りの男をごまかして、安く売るように交渉しただって。
「うんうん、このカラスぁ上物だけぇ、ちったあ、はりこんで貰わにゃならんだけぇど、全部買あてごっさりゃぁ安ぅするだがなあいや」って言うと、思案したあげく、カラスにすりゃあ、べらぼうに高い値段をつけたさなあ。
町の者(もん)は吃驚したけえど、雉子だと只みたいな穴相場だわいや、阿保だけぇ知っとりゃせんだし、気の変わらんまぁに、早よう買あたれいやって言うと、お急ぎで金を払ってしまっただって。
カラス売りのおやじは、銭を懐にねじ込んで、にこにこしもって、背中の篭を下ろし、中から一羽二羽三羽と数えもって約束どおり、カラスを渡したそうな。
すると、町の者(もん)は、棒の先にぶらさげとる雉子を買ったつもりだけぇ、
「おい、だらずにすんないや、こりゃあ、カラスじゃあねえかいや」、
「棒の先にぶらさがっとる雉子を貰わんといけんがなあ」って言うと、
「わしゃ、カラスはいらんかいなあ」って言って買あてもらっただで。
「棒の先にぶら下げとるなぁ、こりゃあ雉子だぜ、雉子はこんな安い値段じゃ売らんわいや」って言うと、当てがはずれて、がっかりしている町の者(もん)を尻目に、さっさと帰って行ったということだって。
そればっちり。
とっとり・民話を語る会の会長、小林龍雄でございます。
本日は晴れやかな会場で、社会貢献者表彰をいただき、心より御礼を申し上げます。
私たちは、民話という古来よりの伝承文化を、次の時代へ継承していくべく、活動を二十数年続けてまいりました。
民話は、「常民の生活」という文化を、「自然との関わり方」「人間との関わり方」「教え」を、分りやすく面白く興味を引く形で物語にしたものです。
今まで、ジャンルとしては、表彰と縁遠い地味な活動でした。
この度の、社会貢献者表彰は、活動への大きな励みになると同時に、全国の民話を愛する仲間にとりましても、大変な力を得たことになります。
しっかりと、次の世代へ継承すべく、切磋琢磨してまいりますので、宜しくお願いを申し上げます。
本日は、誠にありがとうございました。
なお、貴重な時間ではありますが、せっかくの機会でございますので、「昔話」を一つ用意してまいりました。聞いていただきたいと思います。
題名は「キジとカラス」で、鳥取市の無形文化財に指定されている「佐治谷話」(さじだにばなし)七十八話の内の一つでございます。
町の人が、田舎者をだまそうとしますが、はてどうなりますやら!
語り部は、とっとり・民話を語る会会員枡田美穂子さんです。
キジとカラス(佐治谷話 さじたにばなし)
昔々の、或る年のこと。
寒さも、追々ときなりだした、或る日の昼下がりに、用瀬(もちがせ)の町中で往来を、佐治の男が、何やら大けな篭を大事そうに背負って。
右の方には、ザル棒の先に、きれいな見事な大けな雉子を一羽ぶら下げて、得意そうに売り歩いておったそうな。
「カラスはいらんか、カラスはいらんか、大けなカラス、安ぅするが、いらんか」って大声で、竿の先の雉子を、ぶらりん、ぶらりん、させもって、歩いておっただって。
「おい、まあ、ありゃう見いや、在郷(さいご)の者(もん)が、阿保だけぇ、大きな雉子う持っとって、カラスだカラスだって間違えて売って廻りょうるわいや。安ぅさしてみんな買あて一儲けしたらぁかいや」
日頃、狡猾(こうかつ)なことで通っている町の者(もん)が、しめし合わせて、カラス売りの男をごまかして、安く売るように交渉しただって。
「うんうん、このカラスぁ上物だけぇ、ちったあ、はりこんで貰わにゃならんだけぇど、全部買あてごっさりゃぁ安ぅするだがなあいや」って言うと、思案したあげく、カラスにすりゃあ、べらぼうに高い値段をつけたさなあ。
町の者(もん)は吃驚したけえど、雉子だと只みたいな穴相場だわいや、阿保だけぇ知っとりゃせんだし、気の変わらんまぁに、早よう買あたれいやって言うと、お急ぎで金を払ってしまっただって。
カラス売りのおやじは、銭を懐にねじ込んで、にこにこしもって、背中の篭を下ろし、中から一羽二羽三羽と数えもって約束どおり、カラスを渡したそうな。
すると、町の者(もん)は、棒の先にぶらさげとる雉子を買ったつもりだけぇ、
「おい、だらずにすんないや、こりゃあ、カラスじゃあねえかいや」、
「棒の先にぶらさがっとる雉子を貰わんといけんがなあ」って言うと、
「わしゃ、カラスはいらんかいなあ」って言って買あてもらっただで。
「棒の先にぶら下げとるなぁ、こりゃあ雉子だぜ、雉子はこんな安い値段じゃ売らんわいや」って言うと、当てがはずれて、がっかりしている町の者(もん)を尻目に、さっさと帰って行ったということだって。
そればっちり。