受賞者紹介

第50回 社会貢献者表彰

人命救助の功績

なかの だいすけ

中野 大輔

(岩手県)
おおあし まさと

大芦 正人

(岩手県)
中野 大輔
中野 大輔
大芦 正人
大芦 正人

2016年8月30日20時30分頃、台風10号の大雨により岩手県久慈市内近くを流れる長内川と久慈川にかかる橋に流木がかかり、流れがせき止められ川が氾濫し市内に浸水、久慈駅前も2メートル近くの水位になった。中野氏と大芦氏は泳いで避難する途中、2階部分に上がろうとしたアパートの1階の部屋で逃げ遅れた60代の男性を発見、二人でその男性を引っ張りだして救助した。

中野大輔

台風10号が来ている、というあの日。普段通り職場に向かった。台風や洪水があっても浸水する場所は大抵いつもと同じ場所なので気にもしていなかった。

仕事中に職場の入り口の自動ドアのガラスが割れて水が入って来て、店内の掘りごたつの下の方からも水が入って来て、腰の意志まで浸水するまでたったの10分から15分。店の表側は流れが早く出られないと判断し、裏の窓から脱出した。

塀を乗り越え渡ったが途中で足がつかないほどの水位になってしまったため、近所のアパートの二階に逃げ込んだ。辺りは暗く、逃げている最中は不安しかなかった。

とにかく必死で泳ぎ、アパートに辿り着いた。着いてすぐ。休む間もなく、一階からドンドンと扉をたたく音がして、「誰かがいるのだ!」と思い、慌てて大芦さんと飛び込んだ。一階にいたその人は首まで水に浸かり、動けない様子だった。水圧で扉はあかないため、大芦さんに電灯を照らしてもらい、キッチンに回り込んで窓の鍵をなんとかして開けてもらい、その人を引っ張り出して助けた。

三人で何とか二階にあがり着いた。逃げられたことで不安は少し解消された。しかし、服が濡れた状態で、寒さと空腹から安心はできず、眠れず、携帯電話の充電も少なく、情報も入ってこないので、車は大丈夫なのか、家は大丈夫なのか、家族は大丈夫なのか…不安は尽きなかった。

いつ帰れるかもわからない状態の中で、そこの二階の住人の方がお茶と着替えを出してくれた。さらには向かいが自宅の仕事の取引先の方が布団を渡してくれ、その布団をベランダにしいて、避難をしていた計6名でそこに明け方までじっとしていた。

朝6時頃、妻から電話があり、状況を伝え、消防に連絡をするよう伝えた。しかし、怪我人やお年寄り、子どもがいなければ後回しになると言われた。

救助した人が怪我を負っていたが、充電がなかったため上手く連絡のやり取りができなかった。市役所も消防も助けに来ないので、朝10時過ぎにあご位まで水が引いた時、このくらいなら自力で行けると判断し、職場の上司と大芦さんと三人で泳いで道路までたどり着いた。残りの三人はその直後に救助されたと後から聞いた。

まさかここまでの状況になるとは、と思ったし、必死に逃げている状況ではあったが、誰かが危険な状態だと分かると無意識のうちに助けなければ、と咄嗟の判断で体が動いた、

自分たちがその人の信号に気づけて良かったと思う。大変な経験ではあったが、その一方でこういった賞を受賞できた事を大変光栄に思う。

大芦正人

この度、公益財団法人社会貢献支援財団主催による第50回社会貢献者表彰式典におきまして、栄誉ある賞を賜り誠にありがとうございました。

当日は、台風10号の大雨により、私の勤めている飲食店のある地域は2メートル近くの水位になりました。私たちも泳いでアパートの二階部分に避難したところ、下から物音がして、もう一度潜り一階の部屋を確認すると逃げ遅れて溺れている男性を発見しました。救助の最中は無我夢中で考えるより先に体が動いていた感じだと思います。

表彰式では、世界で社会貢献されている方の姿や話をきくことができ、大変感動しました。今回の表彰式に参加させて頂いてなければこのような素晴らしい活動をずっと知らずに過ごしていたと思います。今回の事で自分自身気づかされることも多く、また刺激を受けることができました。

今回の賞に選んでいただき参加できたことは、今後私の人生の中でも一番の誇りになると思います。今後この賞に恥じることのないよう、また社会貢献できるよう生きていきたいと思います。本当にありがとうございました。

  • このアパートの1階から男性を救助し2階の通路に避難した
    このアパートの1階から男性を救助し2階の通路に避難した
  • 久慈駅西口方面は一面水浸しとなった
    久慈駅西口方面は一面水浸しとなった
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