第二部門/多年にわたる功労
和波 その子
「アカンパニーグループ」は、視覚障害者のかたたちの東京都内及び近郊での歩行介助を行い、少しでも自由に安心して上京できるようにすることが目的とする純粋なボランティアグループである。公的な機関での都内のガイドは、東京に籍がないと依頼することができない。
昭和57(1982)年、和波さんのご長男で、視覚障害を持つヴァイオリニストの孝禧氏のチャリティコンサートに、同じく全盲のハンガリーのピアニスト、ドボシュ氏を招待することになった。しかし他の国では一人で自由に活躍しているドボシュ氏を同じように受け入れるための介助のシステムは、当時の国にも都にもなく、あちこちの団体から断られたのち、知人に依頼しなければならなかった。
「全国から人が集まる東京に、視覚障害者のお手伝いをする団体がないのはおかしい」と感じ、これがグループ設立の契機となった。ボランティア精神で視力と時間とを提供してもらい、実費はユーザー負担とすれば、資金も事務所も不要、と友人と語り合った。60年にグループを発足させ、共に歩くことを主眼とし、名称には「同行する」の意の“アカンパニー”を用いた。
発足の際、幾人かの視覚障害者関連の方たちに相談すると「苦労が多すぎる」と反対されたこともあった。が、友人15人でスタートし、現在のメンバーは約50名になっている。事務局を自宅におき、受付は24時間体制。年末年始の4日間を除き年中無休で活動する。依頼者の希望がかなう様に、目的・内容・時間に制限を設けておらず、要望があれば、アカンパニスト(同行者)は都内だけでなく隣接する県にも案内する。制約の多い公共サービスでは、これらの対応はできないため、依頼者からは驚かれると同時に感謝されている。案内件数は5,000件を越えているが、事故がないばかりでなく、未だに1件の苦情もなく、そのためグループには苦情係もない。
和波さん自身は電話で依頼を受け、利用する交通機関の路線や徒歩の道順、所要時間などを綿密に想定したアカンパニストへの依頼書の作成までを、自らパソコンを操作して行っている。事故を未然に防ぐため、グループの月例会では事例を全員で共有する、依頼は直接本人から受け、行き違いのないようにする、前夜の電話でメンバーと依頼者が声で依頼内容を再確認する-などの手順は、すべて和波さん自身が考え、作り出した。
「ボランティアは奉仕や自己犠牲ではなく、自己実現の欲求の実践」と位置づけ、余分な出費を防ぐため会報は発行せず、メンバーの義務は当日のアカンパニーを果たすことと月1回の例会に出席することだけ。発足以来、行政の援助は一切受けず、純粋なボランティアとしてメンバー全員が無報酬で、同時にいわゆる「持ち出し」もない状態で、活動を続けている。