表彰式典

第59回 社会貢献者表彰式典(於:帝国ホテル東京)

受賞者代表挨拶

受賞者代表・認定NPO法人 プラス・エデュケート 理事長 森 顕子 さん

受賞者代表・認定NPO法人 プラス・エデュケート 森 顕子 さん

私は認定NPO法人プラス・エデュケート理事長の森顕子と申します。外国ルーツの子どもたちへの日本語・教科学習支援と教材研究・作成、子どもの日本語教師育成などの活動を行っております。

外国ルーツの子どもには、多様な背景があります。外国で生まれ育ち、親に連れてこられた子はもちろんのこと、親は外国人だけど日本で生まれ育っている子、父親は日本人だけど母親は外国ルーツの人で、国籍は日本などです。我が国では、在留外国人は約300万人となっており、今や外国人なくして、経済はなりたちません。私たちが活動拠点とする愛知県は自動車関連の製造業を中心として、サービス、物流、介護、農業などあらゆる分野で外国人がたくさん働いており、それに伴い外国ルーツの子どもの数もとても多いところです。

文科省の調査によりますと、日本語指導が必要な子どもの数は全国に約6万人といわれ、そのほとんどが、十分な日本語指導を受けられているとはいえません。中でも愛知県は1万2千人もの子どもが指導を必要としており、他県に比べ、群をぬいて多くなっています。そして、学校に通っていない、いわゆる不就学の状態の子どもも全国に約1万人いることも忘れてはなりません。

私たちは活動当初から、6歳から18歳くらいまでの子どもを対象に支援してきました。大人は来日目的があり、必要であれば様々な方法で日本語を学ぶことができますが、子どもは、そうではありません。それなのに、学校では日本語が話せなければ友達ができず、孤立してしまいがちです。また、彼らは学校では日本語、家ではポルトガル語というような環境で暮らす上に、「読み書き」ができる日本語力を持っている親は少ないため、家庭で学習サポートを得ることは難しいです。さらに滞在年数が長くなると、日本での進学や就職を考えなくてはなりません。

そのため、毎日学習できる体制づくりが必要だと考え、行政主導で学校との連携がとれるよう、数年をかけて粘り強く交渉した結果、今では3つの自治体から委託をうけ、指導を必要とする子どものほとんどが、日本語教育を受けられるようになりました。

と同時に、教育内容の充実にも取組みました。学習を始めてから、できるだけ早くにその効果を感じられなければ、子どもたちのやる気は維持できません。市販の教材では満足できず、自分たちで試行錯誤を重ねて、4冊のテキストを完成させ、『3か月で話せるようになる指導法』を確立しました。そして、私がもう一つ情熱を傾けてきたことが「教師の育成」です。

子どもは1人1人素晴らしい能力を秘めており、それぞれの人生の主役です。しかし、多くの子どもはそのことに気付いていません。教師は、彼らに今より少し負荷をかけてやり、がんばらせ、認めて、ほめてあげる。その中で、子どもに自分はやればできるんだと信じさせることが、教師には必要です。いいかえれば、「主役」はあくまでも子ども自身であり、教材や指導法は「脚本や設定」にすぎず、教師は「演出家」でなければならないということです。外国ルーツの子どもにとって、日本語教師は初めて深く接する日本人となります。その出会いが、日本で生活していく自信となり、素晴らしい未来につながるのであれば、これほどうれしいことはありません。今後も広く子どもの日本語教師を育成することで、どこに住んでいても質の高い教育が受けられるような社会が実現できるよう努力を重ねていきたいと考えております。

最後になりますが、この度は、大変名誉な賞を賜りましたことに加え、素晴らしい活動をされ、表彰を受けられたすべてのみなさまを代表してこの場に立たせていただいたことに、心より感謝申し上げます。これからも、皆様とともにこの賞に恥じぬよう精進してまいります。まことにありがとうございました。

認定NPO法人 プラス・エデュケート
理事長 森 顕子