受賞者

第49回

社会貢献の功績

うすき ひさし

臼杵 尚志

(香川県)

北アルプス最奥部の夏季山岳診療所「三俣診療所」で、1977年からボランティア活動を40年間にわたり続けている。この活動は岡山大学の医学生が1964年に始めたもので、医師・看護師・学生によるチームが1班4~5日を担当し、夏山シーズンの1ヶ月間交代で診療にあたる。臼杵医師は学生の時に初めて参加し、その後運営の中心となった。1995年に香川医科大学(現香川大学医学部)に移籍した後は、登山者や岡山大学教程の変化を受け、香川大学学生の運営参加も実現させた。毎夏50名程の受診者を診療するが、診察費・薬品代共に無料である。一方、全国23の山岳診療所に呼びかけ、情報共有のためにデータを収集、その情報は診療所間で共有され、登山者講習等に用いられる他、スポーツ庁主催の山岳遭難対策協議会へも提供されている。

臼杵 尚志
ヘリコプターで搬送するため患者を移動させています
ヘリコプターで搬送するため患者を移動させています

登山者の遭難報道は後を絶ちませんが、非日常的環境ゆえの発病や様々な程度の事故による外傷の数は桁違いで、重傷の搬送数も増加し続けています。このような中、国内の山岳地帯(多くは標高2000m以上)には夏季のみ開設する23の簡易診療施設があり、年に3000人近くを診療しています。診療費は、私が参加している三俣診療所のように診察から投薬・処置まで完全に無料の所、薬等の実費のみ請求する所など様々ですが、何処も医師等がそこまで通う旅費や滞在費は全て自己負担で、当然無給、必要経費は寄付金や参加者自身の負担で何とか捻出している状況です。三俣は長野・富山・岐阜3県の県境で、北アルプス最奥の地とも言われますが、医師達も登山口から10時間以上、時には悪天候の中を診療の不足物品等を背負って登高しています。診療所が開設された昭和39年以来、参加医師は多忙な日常業務の中で漸く得た1週間程の夏休みの全てを、ここでの診療活動と入下山にあててきました。私の初参加は学生時代ですが、山や山を愛する人達、そしてこの活動が好きになって通う内、気付けば40年以上が経っていました。

この度、その診療活動と、類似施設のデータを集計してスポーツ庁等関係機関に報告していることが評価され、この名誉ある賞を戴きましたが、今回の受賞は、私個人というより、このような活動全体が戴いたのだと思っています。何故なら、休暇から入下山に必要な日を差し引くと医師一人の診療期間は長くて5日程で、一夏(3~40日)の診療には最低でも15名程の医師が必要なこと、多くの診療所が50年以上の歴史を持つことから考えると、これまでのべ2万人以上の医師がこの活動を支えてきたことになるからです。そして、看護師や医学生も入れると全参加者数は10万人を超えますので、極めて長期の壮大な医療ボランティア活動と言えます。

ただ、こう書きますと、随分と大きな事の様ですが、単に自分が好きになったことを続けて来ただけでもあります。今回、授賞式に出席して、世の中には他の人の為に我々よりも遥かに苦労をしておられる方や、社会の本当に細かな片隅にまで光を当てようとしておられる方が沢山いらっしゃることが分かり、自分などまだまだ甘いと感じました。しかし、お認めいただいたことを励みとして、私だけでなく同様の活動をしている仲間を鼓舞し、今後も一人でも多くの「今、困っている方」のお役に立ちたいと思っております。

  • 診療所ー小屋
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