受賞者紹介

第49回 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

もり やすこ

森 泰子

(宮崎県)
森 泰子

1962年から宮崎県警察宮崎北警察署内に理容室を開き、署員の散髪のほか、留置施設内に収容された暴力団を含む被疑者の散髪も臆することなく請け負っている。他の警察署では被疑者の散髪を理容師が怖がり、苦慮しているところもあるが、森さんは分け隔てなく客として接し、時には励ました。被疑者の中には釈放後「ありがとう。また切りに来ます」と挨拶に来る者もいて、更生にも寄与している。警察署内理容室は全国にもあるが、森さんは大病を克服し、54年間現役で散髪続けている。

推薦者:坂元 健児
宮崎北警察署理容室にて
宮崎北警察署理容室にて

このたびは、身に余る賞を頂きありがとうございました。こんな名誉ある賞は自分とは関係のないほかの世界のことと考えていました。表彰が内定しても我が耳を疑いながら、晴れやかな受賞式の日を迎え、感激にふるえました。

昭和10年に宮崎県日南市の田舎の村に生まれ、学も知識もない私が自活の道を目指して理容の世界に入って60年余り、大勢の方に支えていただいてここまで生きてまいりました。ただ一筋に散髪を続けてきたことがこのような大きな賞につながりました。皆様方に深く深く感謝申し上げます。

昭和31年に理容学校を卒業し、昭和37年(1962年)に知人の警察官から依頼を受け、宮崎北警察署の前身である宮崎警察署に理容室を開設しました。当時は署内で散髪が可能であるため、とても重宝がられ多い日は10人以上のお客さんが来て忙しかったのを覚えています。

留置場に収容された被疑者の散髪も有料で請け負ってきました。隣接の警察署からも散髪に連れてきました。新聞でしかわかりませんが、殺人犯や暴力団員、それから身分の高い方もいました。

正直、若いうちは少しこわいと感じましたが、慣れてくると一般の人と同じであることに気がつき、そのうち偏見も全くなくなり、同じ一人の人間として分け隔てなく客として接してきました。

「更正して頑張るんだよ。もう来るんじゃないよ。」と励ますこともあり、釈放された後に「おばちゃん、ありがとう。また、髪を切りに来ます。」とあいさつに来てくれることもありました。そんなときは、仕事冥利に尽きると感じ本当に嬉しくなりました。

しかし、そううまくはいきません。再犯でまた入ってくる者の方が多く、そんなときは、悲しくなりました。いろんなことがありましたが、気がつけば、もう54年以上も経ちました。

この仕事を継続していくなかでの一番の危機は、昨年12月に心臓発作で倒れたときでした。このときは、運良く助かりましたが、もう続けることができないだろうと自分でもあきらめかけました。しかし、今年の3月に退院し、一生懸命リハビリをした結果、また9月から理容室を再開できました。

全く来客のないときもありますが、全く気にしていません。警察に育ててもらったと大変感謝しています。その恩返しのためにも私が元気な限り、この理容室を続けてまいります。本当にありがとうございました。

  • 宮崎北警察署前
    宮崎北警察署前
  • 職員散髪
    職員散髪
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」