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受賞者

第48回

社会貢献の功績

とくていひえいりかつどうほうじん にほんいらくいりょうしえんねっとわーく

特定非営利活動法人 日本イラク医療支援ネットワーク

(東京都)

1991年の湾岸戦争と、2003年のイラク戦争で使用された劣化ウラン弾の放射能の影響と思われる、がん・白血病の発生率が増加したイラクの子どもたちの窮状を救うために、NPO、市民グループ、企業、日本とイラクの医師たちによって2004年に結成された。2012年にNPO法人に認可され、戦争の影響によってがんや白血病などに罹るイラクの人々が医療を受けられ、命が助かることを目指し、①効率よく、②専門性をもち、③継続的に支援を行い、平和で安心できる社会づくりを目指している。また、国内外を問わず放射能汚染から人々を保護するために必要な活動を行っている。東京都豊島区とイラクのアルビルに活動の拠点を置く。

特定非営利活動法人 日本イラク医療支援ネットワーク 理事長 新開 純也
理事長 新開 純也

「モスルの思い出とともに」

モスル解放作戦で難民化したがんの子どもたちが病院に来られるように手配
モスル解放作戦で難民化したがんの子どもたちが病院に来られるように手配

授賞式の前日にイラクから帰国し、成田からホテルに直行いたしました。モスルが「イスラム国」から解放され緊急に抗癌剤などを病院に届けるオペレーションを行っていたために帰国がぎりぎりになってしまいました。

式典にのぞみなら、今まで出会ったイラクの子ども達のことが思い浮かびました。JIM-NETを作るきっかけとなったのが、2003年、イラク戦争開戦前にバグダッドを訪問した時のことです。小児がんの専門病院では、患者の親御さんに呼び止められ、「薬がないんです。何とかなりませんか?」とか、「日本で治療を受けられないのでしょうか?」と相談されました。イラクの医者は、「あなたが、今、薬を届けたところで、それは偽善にしかなりません。なぜなら、がんの治療には2-3年かかります。その間の薬がそろわないと、命は助からないのです。」当時のイラクは大量破壊兵器を所有ないし、開発しているとして経済制裁を受けていました。抗がん剤は、化学兵器に転用されるとして、制裁の対象になっていたのです。

「イラクは石油の取れる国です。経済制裁がなくなれば、自分たちでやっていけるんです。国際社会に伝えてほしい。私たちは、薬が必要です。それは、大量破壊兵器を作って人を殺すためではありません。この子どもたちを救うためなのです。武力行使をしないで、経済制裁を解除してほしいのです」

イラク戦争前にバグダッドの病院で出会った白血病のラナちゃんとの約束からJIM-NETが立ち上がった
イラク戦争前にバグダッドの病院で出会った白血病のラナちゃんとの約束からJIM-NETが立ち上がった
ラナちゃんが描いた「日本の友達と私」
ラナちゃんが描いた「日本の友達と私」

 その時入院していた12歳の少女、ラナのことをはっきりと覚えています。私が病室で絵を描いて欲しいというと、ほとんどの子どもが、(描き方を)知らないというのに、彼女は喜んで描いてくれたのでした。腕には点滴のチューブが刺さっていましたが、鉛筆を握りしめて力強く描いてくれたのは、日本人の少女と手をつないでいる絵です。「ともだちになりたい」といっていました。彼女はちょうど20日前にモスルというところから白血病で入院してきたそうです。私は、その絵を大切に日本に持って帰り、TVなどで紹介してもらいました。「戦争がはじまったら、入院しているような弱い子どもたちから死んでいきます。」といって戦争に反対しました。残念ながら、戦争を止めることはできなく、アメリカの戦勝がはじまってから、イラクに戻り病院を訪問すると、ラナちゃんは私があって5日後に亡くなったということを知りました。半年ぐらいたち、どうしてもラナちゃんの家族に会い、何もしてあげられなかったことを謝ろうと思い、モスルまで出かけていきました。

しかし、謝る前に、ラナちゃんのおばさんが出てきて、「あの時、病院には外国人がたくさん来て、写真ばっかりとっていった。あの時薬があれば、ラナは助かっていたんです。どうして、助けてくれなかったんですか?」「いや、経済制裁で薬は持ちこめなかった」
「じゃあ、助けようという気はあったんですか?」「もちろんですよ。だから、今は、病院の支援をしているんですよ」
「遅すぎる。おそすぎるわ」と逆に説教をされました。しかし、その時の「遅すぎる」といわれた言葉が耳から離れず、今できることをやろうと周りの人たちに声をかけて立ち上げたのが日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)で気が付くと13年が経ちました。本当はもっと早く支援が必要でなくなるのではと思っていましたが、それどころか、「イスラム国」との戦いで状況は悪くなるばかりです。今回の受賞はとても励みになりました。ラナちゃんのおばさんの「おそすぎるわ」という言葉がまた耳から離れなくなりました。

受賞に恥ないようにこれからも頑張ります。ありがとうございました。

JIM-NET事務局長 佐藤 真紀

  • イラクの病院を訪問し巡回に立ち会う鎌田代表[左]
    イラクの病院を訪問し巡回に立ち会う鎌田代表[左]
  • がんの子どもを見舞う佐藤事務局長
    がんの子どもを見舞う佐藤事務局長
  • がん患者と家族のための宿泊施設
    がん患者と家族のための宿泊施設
  • 病院に薬を届ける
    病院に薬を届ける
  • 薬が病院に届く
    薬が病院に届く