受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

わたりいちごっこ

亘理いちごっこ

(宮城県亘理郡亘理町)
亘理いちごっこ 代表理事 馬場照子
代表理事 馬場照子

東日本大震災発生後、亘理町で被災者支援活動を開始した際に自然に発生した、同町内の集会所にできたカフェで(現在は移動している)、罹災証明書を持った人には無償で食事を提供してきた。ワンプレートバイキングという方式を取り、罹災者とささやかな会話をするなかで、罹災者が本当に必要としている支援に応えようと、支援活動の問題点や解決策を探りながら様々な活動を継続している。震災で崩壊したコミュニティを復活させるため、恒久的に続けていく予定。

推薦者:乳井 昭道/山形 俊子

東日本大震災後、避難所では満足な食事をとることが出来ない状況でした。

1日2食。ことに会社勤めをしている方たちにおいては朝10時の食事を食べることはできません。また、16時に支給される夕食は帰ってきたころには固く冷たくなってしまっていました。冷え切ったご飯を冷え切った汁物に浸して食べていたのです。

 

被災地にて早急に解決していかなければならない4つの課題を見出しました。

  1. 罹災者やボランティアへの食事提供。
  2. 浜で津波の被害を受けた方と、丘側でライフラインが復旧すれば普通に生活できる人々。それぞれが理解し合えるような環境の整備。
  3. 被災地外からの支援のジョイント。
  4. 支援を受けたままにせず循環・継続可能な支援へ繋げる試み。

 

2011年5月3日、前述した課題を解決するため、たくさんの支援者たちの協力を得ながら、被災地における被災者たちによるコミュニティ・カフェレストラン【亘理いちごっこ】が立ち上がりました。

罹災証明書をお持ちの方には完全無償で、それ以外の方たちからは500円+志をいただいて食事の提供を行いました。

町の集会所での活動の様子(5,6月)。OnePlateBikingで野菜をふんだんに使った栄養バランスのとれた食事を提供。

40畳のフロアにたくさんの方たちが集まってくださいました。食だけではなく余暇活動を行うことで元気になっていただこうと様々な企画を実施しました。またいちごっこで震災後初めての再会を果たされた方たちもたくさんいらっしゃいました。生きているとも亡くなっているともわからなかった者同士の感動の再会でした。

震災から半年を過ぎたころから、自分たちも何かしたいという声が上がるようになってきました。カフェを手伝う人、いちごっこお話聞き隊(後述)のメンバーになる人、各種イベントを手伝ってくれる人が現れてきたのです。

立ち上げから7か月間続けてきた食事の完全無償提供も変化のときが来ました。
12月から完全無償を改め200円による食事提供としました。そしてこの6月、新プレハブいちごっこがオープンしました。
それを機に、罹災者と非罹災者の垣根を取り払い、罹災証明書を持参しなくても食事をすることが出来るコミュニティ・カフェスペースを作り上げました。

 

さて、【亘理いちごっこ】は、3本の大きな柱を持って活動しています。

  1. コミュニティ・カフェレストランいちごっこ
  2. いちごっこお話聞き隊
  3. 寺子屋いちごっこ

 

外へ出かけることが出来ない方たちの話こそ伺わせて頂かなければならないと【いちごっこお話聞き隊】事業を立ち上げました。仮設住宅・みなし仮設・被災家屋に暮らされる方たちを一軒一軒回り、支援物資やお知らせを持参しながらお話を聞いて歩いています。

 

そしてもう一つの柱、「寺子屋いちごっこ」。震災によって子供たちも大きなダメージを受けました。学習環境を整えなければならないと震災直後の5月、カフェレストランの余暇活動スペースで、また12月からは仮設住宅集会所において寺子屋を実施しました。講師、学生講師の協力を得、保護者と協力し合いながら寺子屋を進めています。

 

【亘理いちごっこ】にはたくさんの方が集まります。

みんな元気になってきました。それでも眠れぬ夜を過ごす方は大勢いらっしゃいました。一人になっても何か楽しいことを考えていてほしい、そんな思いでカフェの中で作り物を始めました。今は全国に発信し、製作料を還元。また笑顔が広がっています。

罹災された方々の悩みは尽きません。どうやって安心安定した生活を確保していくか。当方では、コミュニティの場の提供だけではなく、地域経済活性化のための施策も柱の一つとしていこうと動き始めました。
 (1) ありがとうチケットの発行
 (2) 地場産品の全国への発信
たくさんの地域内外の応援に感謝の意を表すため500円分の【ありがとうチケット】を発行します。加盟店を増やし、地元企業の笑顔を増やします。

また、いちごっこブランドを発信してほしいという全国の方たちの声をいただいています。今商品をアピールし、被災地という冠が取れた後も地域経済が活性化されていく仕組みづくりをしていかねばならないと活動しています。

【亘理いちごっこ】は大きな家族を目指します。半世紀ほど前の日本の家庭は大家族でした。会話の中、生活の中には、今でいうさまざまな支援がなされていました。老人福祉支援、就労支援、学習支援、引きこもり支援、障碍者支援、物的支援・・・。

その中でさまざまな支援は、当たり前のこととしてなされていたのです。あえて支援という言葉は使われていなかったのです。

【亘理いちごっこ】は、人と人との繋がりの中で必要なことをお互いに支え合い、当たり前のこととして受け止め活動していきます。これからもこの被災地に、全国・世界の方たちと共に「大きな家族」を作っていきます。


参照:
「3・11後の世界にむきあう学習を拓く」石井山竜平編著 国土社 第4章1節執筆
「社会教育 9月号」国土社 "必要迫られる循環型支援"コラム 執筆