受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

ざいだんほうじん みやぎこうせいきょうかい
さか そうごうびょういん

財団法人 宮城厚生協会
坂総合病院

(宮城県塩竈市)
財団法人 宮城厚生協会坂総合病院 坂総合病院 院長 今田隆一
院長 今田隆一

災害拠点総合病院として日頃から訓練を積み重ねていたが、想定をはるかに超えた大震災で、病院機能の拡大を求められた。自らも被災している多くの職員が自主参集し、全国から集まった2443名(5月31日現在)の支援者と一丸となり、震災から12日間でトリアージ診療患者2484名(通常の4.1倍)、救急車搬入数397台(通常の3.7倍)、入院患者304名(通常の2倍)、避難所診察患者数4283名などに対応した。9ヶ月たった今でも、チームを組んで毎週一回は仮設住宅へ、生活支援、医療相談活動に出かけている。

推薦者:社団法人 宮城県医師会 会長 嘉数 研二

東日本大震災に対する坂総合病院の取り組みを振り返って

あれからもう1年が経過しました。今でも患者さんに震災のことを少しずつ聞いています。すさまじい経験をされた方も数多くおられ、ひとつひとつのお話に胸が痛みます。

さて震災の発災後の状況を私は5期に分けて考えています。津波に襲われた直後は建物、道路、工場、鉄道、破壊されて街の原型をとどめていませんでした。広範囲にわたってライフラインが障害・途絶されていたほか、各所で火災が発生し、被害をひろげました。ガソリンが極端に枯渇したほか、双方向の通信手段も衛星電話やMCA無線などごく限られたものだけであったため、多くの地域では情報の点からも孤立し、各地域は救急車の到達できる範囲どころか人の歩いていける距離の範囲に限局された医療の提供ができるだけでした。この時期に問題となったのは津波による直接的被害である溺水、巻き込まれ外傷、低体温症などで、震災後3日ほど続きました(第1期)。当院では通常診療を行わず、トリアージ体制を敷いて対処しました。

その後、双方向の情報のやりとり、ならびに救急隊の日常の活動が可能になるにつれ透析や在宅酸素治療を受けている患者や、慢性疾患や日常生活活動能力障害患者の重症化、肺炎などの併発症への対応が主となっていきました(第2期)。結局、救護活動させていただいた患者さんは第1期と合わせて2400件にものぼりました。

避難所が整備され、医療支援が組織的系統的に行われるようになってから避難所生活における生活環境の変化や制限によって発症する疾患が増えてくるようになりました(第3期)。病院も通常診療を再開し、避難所への医療支援を精力的に行いました。

やがて避難所の中の医療ニーズも次第に介護ニーズなどに変化し、また多くの住民は仮設住宅へと移住していきました(第4期)。避難所への医療支援のみならず、仮設住宅への支援も開始しました。

現在はほとんどの被災者は自宅か仮設住宅への移転が完了、日常生活が徐々に戻ってきています(第5期)。医療ニーズもほぼ通常と変わりなくなりますが、PTSDなどのストレス障害のような精神科的心理的ケア対象の方が多くなる時期であり、病院としてもその取り組みをしております。

坂総合病院は地域医療支援病院であり、かつ地域災害医療センターです。一方、臨床研修指定病院でもあるために、今回の震災にあたっては多くの若い医師の疲れを知らない不眠不休の活躍が不可欠でした。

発災後三日目に緊急地域連絡会議を保健所長、医師会長にお願いして開催させていただきました。振り返って大変よい仕組みであったと感じています。

さて被災地では復旧・復興はこれからの印象です。私たちも地域への支援の継続、そして本格的な復興へのお手伝いをしなければ、と思っております。

この間、全国からたくさんのご支援をいただきました。また今回は表彰の栄誉に浴することもできました。職員を代表して感謝の意を表明したいと思います。職員一同、これからも元気に頑張ってまいります。