受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

さとう よしふみ

佐藤 善文

(77歳:宮城県東松島市)
佐藤 善文

チリ地震を契機に、三陸でも近いうちに地震による津波で甚大な被害を被る事態を想定していたことから、自宅の裏山を私財を投じて避難所として利用できるように10年かけて整備していた。高さ30m程の山に4方から昇れる石段を作り、頂上には広場と東屋、8畳ほどの小屋を作り、食料や水、燃料などを常時備蓄。大地震直後は40名程の人が既に避難してきていた。津波は直ぐにやってきて更に30名程が命からがらに避難し合計70名程の人が避難し、自衛隊が来るまでの2日間を過ごした。日頃、山は「佐藤山」と呼ばれ、時に変わり者と呼ばれながらも、結果的に70名もの人命を救うこととなった。

推薦者:公益財団法人 社会貢献支援財団

今回、由緒ある社会貢献者表彰の受賞の栄に浴し、本当に心より感激いたしております。

 

私自身、海に近い場所に自宅があり、平成11年頃に津波から人命を守るには高い場所になければならないと心を入れて考え、JR仙石線の野蒜駅近くでタクシー会社を経営しておりましたが、避難所を作る自由な身体と時間が欲しいと息子に経営を譲りました。

そして、自宅より100メートルほど離れた小高い岩山(30メートル程の高さ)に、全く人の手を借りずに藪を刈り、柱などの資材を担ぎ上げ、頂上には海の見える展望台、小屋、あずまやを作り、水やプロパンガス、コンロ、石油ストーブ、ある程度の食料も備えました。

「災害避難所(津波)」の案内板も立て、岩を削り、四方の斜面から登れるように階段を作りました。

桜が植樹されている

平成12年には、桜、梅を植え、山野草や小鳥の声を聞き楽しむことができるようにしたところ、書家である私の叔父が、ここを『喫茶去苑(きっさこえん)』と名付けてくれました。

作業中、「大津波なんて来ないよ」と数人に言われましたが、そんなことは気にもなりませんでした。

そして平成23年3月11日午後2時46分、大地震が発生、大津波の襲来によって生命、住宅、雄大な景観など多くの大切なものを一瞬にして奪い、今までの当たり前ではあり得ない変貌の時が突然やってきて、学校や指定避難所、避難途中で多くの犠牲者が出ました。

そのような時、『喫茶去苑』は避難所として本領を発揮し、70人余りの命を守ってくれました。

今回のような、又はより大きな災害が起きた時に、より多くの尊い命が助かることを願い、現在は『喫茶去苑』のすぐ傍らの地にも新たに手を加えております。

去年の秋に鎮魂と復興の手あわせ桜の活動とも協力し、趣旨に共鳴いただいた長野市戸隠の大山桜を整備中の場所に15本ほど植樹しました。今春さらに15本、最終的には60〜70本の桜を植樹予定です。

近隣住民は勿論、観光で訪れた人々もすぐに避難できる場所に、そして春には桜が咲き誇り、多くの犠牲者の御霊と遺族の悲しみを慰め、今後生きていく者たちには復興のシンボルの場所になりますように、願いを込めて作業していくことが今後の私のいきがいになりそうです。

 

 

  • 手作りの階段
  • 住民が避難した小屋
  • 東屋