社会貢献の功績
森本 喜久男
カンボジアの伝統絹織物である絹絣に魅せられ、 1996年にクメール伝統織物研究所を設立し、内戦により失われつつあったクメール織の技法復活と貧困層の支援のため活動を始めた。2003年にアンコールワットがあるシェムリアップの広大な敷地で「伝統の森プロジェクト」を開始し、養蚕、餌となる桑の植樹、染料になる虫の育成から糸を紡ぎ、染色、機織りと製品化までの全てがこの森で完結する伝統織物の継承とさらに食糧の自給生産から教育の全てをまかなうための施設を運営されている。
理事長 伊澤 宏爾
「社会貢献支援財団の受賞にかえて」
この度は、社会貢献者支援財団よりの受賞を頂きましたこと、うれしく光栄に思います。
1995年、カンボジアの現地で活動を開始して15年が経ちます。当時はまだ一部の地域で戦闘があるような頃でありました。しかし、その内戦の混乱の時代も終え、いまあらたな国づくりに向かおうとして、活気ある姿が現在のカンボジアであります。
内戦前には東南アジアの中でも代表的な絹織物が織られていましたが、その伝統も内戦のなかで消えかけようとしておりました。そんな伝統の技術を持つ人々を探し、出会いながらその復元に取り組んできました。そして、その技術や経験を若い世代に伝え、技術を育成、貧しさの中で暮らす村人に仕事を提供する仕事にかかわってきました。この10年間に、受け入れてきた研修生は900人を越えます。そのなかには、多くの孤児や母子家庭といわれる女性たちも含まれます。
カンボジアは豊かな自然環境のなかで、恵みとしての豊かな伝統の織物が織られてきました。しかし、この自然環境も戦乱の中で失われ、伝統の織物を復活させるためには、自然環境も再生させなければなりません。そのために、2002年から「伝統の森」再生事業に取り組み、素材となる桑の木、蚕、綿そして自然染料となる植物など、織物に必要な自然環境を再生する仕事に取り組んできました。現在、23ヘクタールの敷地では自然の森を育て、織物に必要な全てのものがそこにある、そんな自然環境を取り戻し始めています。
古くから、自然と暮らしてきたカンボジアの人々の知恵を取り戻し、伝統の仕事にかかわる誇りを持つ人々。そんな小さな新しい村を作りながら、伝統の織物のある生活を再生し、300人の人々と暮らしております。