受賞者紹介

平成19年度 社会貢献者表彰

人命救助の功績

せんぞく ゆたか

千速 豊

(昭和28.10.6生 54歳/神奈川県)
千速 豊
平成18年11月15日の朝、液化天然ガス運搬船の船長として、マラッカ海峡の入口にあたるロンド島付近で沈没した漁船から退船し、漂流中の台湾人、中国人、ベトナム人の計20人の遭難者を発見、海賊被害や船舶交通量など救助が難しいなかで、無事救助した。
推薦者:社団法人 日本船長協会

受賞の言葉

今度、社会貢献者表彰を受けましたことは、私始め救助に携わった乗組員、また船社関係者一同、誠に光栄と存じますとともに、貴財団、ご推薦戴いた関係者に心より感謝申し上げます。今後も船舶の安全運航、後継海技者の育成、洋上でのシーマンシップの更なる向上に努めてゆく所存です。

明石海峡大橋を航過前の本船

千速さんは、液化天然ガス運搬船(通称LNG船)「ソハールエルエヌジー号」に船長として乗船中、北アメリカのトリニダードトバコ共和国のポイントフォーテンを出港し、大阪湾へ向かう航海の途中、11月15日午前10時頃に遭難信号を受信した。千速さんは、LNG船を直ちに遭難地区に向かわせた。午前11時頃に西方からのマラッカ海峡の入り口にあたるロンド島付近で、沈没した漁船から退船し救命筏2隻で漂流中の台湾人、中国人、ベトナム人の計20人の遭難者を発見、午後12時半頃収容した。17日には、シンガポール港に寄港し、遭難者全員をシンガポール当局に引き渡した。

同海域はマラッカ海峡の西の入り口にあたり、船舶の交通量が多く、1日当たり2百隻以上で、マラッカ海峡の年間交通量は9万隻にもおよぶ。遭難通信を傍受したのは、同船だけではないなかで直ちに救助に向かったものである。LNG船は船体が大きく、乾舷(船体が海面と接する線までの長さ)も20メートルと高く、危険物船で操縦性能の悪い LNG 船でもあり、救助には適していないにもかかわらず躊躇することなく、救助に赴き問題無く救助した。

同海域はインドネシアの海賊被害多発地帯でもあり、本来船速を落とす(0(ゼロ)ノット)ことは海賊の防止の観点から望ましくない海域であったが、安全と保安について十分な確認を行った後に救助活動を遂行した。

また、遭難者を救助したあと下船させるまでのシンガポール当局に引き取ってもらう条件が、遭難者一人一人の身元確認が必要とされ、確認が取れない場合は引き取りを拒否される。パスポートを基に個人の情報(国籍・氏名・年齢等)を作成するなど煩雑な引き渡しの事務的な手続も行い救助し引き渡しを行った。

救助を求めるラフトに乗った漁船員
本船サイドで救助用ロープに泳ぎつく漁船員
本船上に救助された漁船員達

Mr. Yutaka Senzoku

(born October 6, 1953[54 years old] ; Kanagawa Prefecture)
In the morning of November 15, 2006, Mr. Senzoku, who was captaining a liquefied natural gas carrier near Rondo Island at the entrance to the Strait of Malacca, discovered a total of 20 people floating in the water. These people, who included Taiwanese, Chinese, and Vietnamese, had abandoned their sinking fishing boat. Despite circumstances that hindered rescue―such as risk of piracy and high vessel traffic―Mr. Senzoku was able to safely rescue all in the water.
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