受賞者紹介

平成16年度 社会貢献者表彰

第三分野/特定分野の功績

海の貢献賞
みき しげひろ

三木 茂廣

(昭25.9.4生 54歳/香川県三豊郡)
三木 茂廣
立体構造を平面に展開し船舶の製造に不可欠とされる「現図」の制作には、厳しい作業環境での多年に亘るたゆまぬ努力と天賦の才能を要求されるが、氏は多年その業務に携わる第一人者として我が国の造船業に貢献されている。
推薦者:(社)日本中小型造船工業会

受賞の言葉

造船の現図作業に携わり地道にやってきたことが認められ、今回このような栄誉ある賞をいただき、深く感謝申し上げます。
これもひとえに会社の永年にわたり培った造船技術と経験あってのことと受け止め、諸先輩方、同僚に感謝いたすところであります。
今後は、さらなる技術向上と後進育成に努めて参る所存であります。

現図作業中の三木さん

三木さんは、30年以上にわたり船の製造に不可欠な「現図」と呼ばれる作業に携わってきた。現図とは、設計から指示された形状、寸法の部品を鋼材から切断し組み立てるため、船体の外板(曲面)の製造情報を設計図に従って現図床に実寸で転写する作業である。その技能の修得には、既に出来上がっている船の構造・製造精度を常々注意深く観察する修練が大切であり、2次元図面から3次元船舶形状を想像する空間能力が必要とされる。長年の経験、修練と空間認識能力や幾何学の才能が必要とされる現図作業にはテキストらしきものさえなく、第一人者と呼ばれるまでには、たゆまぬ努力の積み重ねと天賦の才能が必要とされる。三木さんはその両者を兼ね備えていた。

現在、現図作業の中心は多年の経験を積んだ50歳台が担っており、わが国と近隣諸国の造船業でしばしば指摘される「納期の正確さ」、「品質」の差は、もっぱら現図工の質の差にあると言ってよい。「現図なしで造船は成り立たない」と言われるこの作業には、仕切りや柱のない広いスペースが必要となるため、洋の東西を問わず昔から「屋根裏の床」で行われてきた。そのため現図工の作業場は、空調設備のない劣悪な環境となっている。現図工の人材不足が深刻さを増している昨今、三木さんが所属する(株)讃岐造船鉄工所では、三木さんを手本に人材が育っている。

現図を基に製作された型枠