受賞者紹介

平成11年度 社会貢献者表彰

第一部門/緊急時の功績

あきの ゆたか

故. 秋野 豊

(当時48歳・北海道札幌市)
中央アジア・タジキスタンの「国連タジキスタン監視団(UNMOT)」で、停戦監視、和平支援などの平和維持活動に活躍中の平成10年7月20日、同国内のラビジャールで反政府指導者との交渉を終えて監視団の車で移動中、首都ドゥシャンベ東方約180kmの山岳地帯で反政府側勢力に銃撃され、同乗していた外国人国連要員3名とともに殉職された。
推薦者:笹川平和財団

タジキスタンでは旧ソ連からの独立以来、政府側と反政府勢力側との内戦が続いていたが、平成9年(1997年)最終的な和平協定が調印された。

同国の停戦監視、和平支援を行う「国連タジキスタン監視団」への人員派遣は、日本政府が国際社会において政治的・人的な国際貢献を行う重要な機会であり、氏は旧ソ連・中央アジア地域に関する専門家として同国へ派遣する人員の選定を政府から要請された。

しかし、適任者がいなかったため氏自らが現地へ赴くこととなり、同10年4月以来8月末までの予定で日本政府から政務官として、政治的和解を進める同監視団に派遣されていた。

現地入りした氏は、民生部門の文民要員として同国内を巡回し、内戦のため隣国のアフガニスタンに逃れていた反政府側市民などの居住地域の建設や、兵士の武装解除等に携わった。また、タジク語を独学して現地住民との交流を深め、居住地域に赤痢が発生すると衛生環境の改善に奔走するなど、国民の和解と民主化の推進に大きく貢献している最中の同年7月20日、平和への願いをうち砕く銃弾により殉職した。

平成4年から2年間、筑波大学社会科学系助教授として講義の傍ら、米国東西研究所・在プラハ欧州センター上級研究員として精力的な研究を続け、地域紛争調停者としての専門的能力を身に付けた。

文献中心ではなく現地での実態調査を重視し、自らの危険を顧みずに紛争地域に赴くなど、“定点観測”と名付けた独創的かつ行動的な研究方法を確立した。氏の研究業績は、「地政学的研究の第1人者」あるいは「ハダシの実証主義者」と畏敬され、学界はもとより国内外から高く評価されていた。

国際平和の推進に寄与し各国の人々に親しまれながら凶弾に倒れた氏の功績を偲んで、緒方貞子国連難民高等弁務官は『国際平和と人道に命懸けで取り組んだ』と讃え、その死を惜しんだ。